菌糸ビンとバクテリアビンの違いについて

 天然のオオクワガタは、何故大きく成れないのかと言うことを考えたことがありますか?

 自然界においては、通常オオクワガタの幼虫はキノコの生えた木に入り、キノコの菌糸が作った成分を主に摂取して大きく成ります。
 ところが、木には体を作るためのタンパク質が殆ど含まれていないので、幼虫は主にキノコが作ったタンパク質だけを消化吸収して体を作ることに成りますが、キノコが作ったタンパク質だけでは大きな幼虫に成る為に十分なタンパク質を摂取できないと思われます。従って、木の中で大きく成れば成るほどタンパク質が不足気味に成り、タンパク質の不足が大きく成れる遺伝的な要素を制限し、結果として大きな成虫に成れないと推測出来ます。

 では、”何故材飼育でも偶に大型が出る”と言うことを考えるに、木を食べて繁殖できるタンパク源と成る微生物(バクテリア等)や菌糸が腐敗した時に出来るアンモニアを利用するバクテリア等を幼虫の時に体内に取り込んで木の中に潜り込んだ幼虫だけが大きく成れると言う考え方が思い浮かびます。
 実際、1997年8月、材飼育で羽化した山梨産♂79mmオーバーは、今思うに、材の中に入れる前に偶然褐色腐朽菌(腐葉土等の中にいるバクテリア等の微生物)を含んだ餌を2齢まで食べさせてしまいました。
 同じ材の中に褐色腐朽菌を食べた幼虫と食べていない幼虫を入れたのですが、その区別は出来ないもののおそらく褐色腐朽菌を食べさせた方が79mmオーバーに羽化したと思われ、他方は72mmでかなりの差が出ました。
 材飼育においても材の中に入れる前に木を食べて繁殖できるバクテリアを体内に保有することは必要であると思われ、菌糸が作成するタンパク質だけに頼らないで、繁殖したバクテリア自体をタンパク源とした方が大きくなれる確立が高いと思われます。
 バクテリアビンを考案した基本の考え方に成っています。
菌糸ビン
 通常の菌糸ビンは菌糸が作ったタンパク質を含んでいるだけなので、菌糸だけを食べている幼虫は大きく成れば成る程タンパク質が不足します。偶然、体内にバクテリア等の共生微生物を多量に取り込んで菌糸ビンの中に入れた幼虫だけが、菌糸ビンの中で非常に大きく成れるだけで、その確立は非常に低く成ります。つまり、殆どの幼虫がタンパク質の不足により自己が成り得る最大サイズより遙かに小さいままで成虫に成ると思われます。
 同じ様な菌糸ビンが反乱している今、新しい考え方に基づく菌糸ビンの応用を取り入れなければ先へ進むことはもちろん現状の維持さえ出来ず大型は望めないことに成ります。更に、取り扱いに付いての間違った考え方も修正する必要が生じます。
 バクテリア等の動物性微生物を利用しない菌糸ビン飼育は限界に来ていると思われます。バクテリア等共生微生物の応用が無ければ、より大きな成虫を羽化させることは困難でしょう。
栄養価の高いバクテリア
 通常の菌糸ビン飼育に於いて、菌糸が作ったタンパク質だけを消化吸収するよりも、体内若しくは菌糸ビンの内部で菌糸を餌に繁殖したバクテリア等の微生物その物をタンパク源にした方が遙かに効果があります。
 つまり、幼虫が菌糸に含まれるタンパク質を只単に摂取するよりも、栄養価の高い菌糸をバクテリア等の微生物に食べさせ菌糸ビンの中で繁殖したバクテリア等の微生物を摂取して同化吸収した方がタンパク質の質・量からも確実に幼虫は大きく成るからです。また、体内で繁殖するバクテリア等の微生物の栄養価は幼虫が食べている餌によって決まると思われ、カワラタケ菌の腐朽した飼育材よりヒラタケ菌の方が、はるかに栄養価が高く、菌糸を食べて繁殖したバクテリア等の微生物も同様のことが言えるでしょう。

 
菌糸の状態と培養の仕方に注意を払い、質の良い菌糸とバクテリア等微生物の重要性が問われます。

 通常の菌糸ビン飼育では体内にバクテリア等の共生微生物を多量に取り込むことは困難なので、最も効果の有る方法として菌糸ビンの中にバクテリア等の微生物を封じ込めることにより、誰でも簡単にタンパク源となるバクテリア等の微生物を利用することが出来ます。
 
菌糸だけでは大きく成ることが出来ません。
空気の重要性
 バクテリアが繁殖するために食べている木材の成分は、C(炭素)、H(水素)、O(酸素)が殆どで、バクテリアが十分繁殖する為には窒素の存在が不可欠であると思われるところもあるので、菌糸ビン内の空気の流れにも注意する必要があります。
 好気性、嫌気性等の相反する条件があり、バクテリア等微生物の繁殖に多少矛盾するところも有りますが、新しい空気を幼虫に与えなければ結果として幼虫自身がタンパク質の不足を来すと思われます。
 微生物タンパク質の合成には、いろいろなバクテリア等(微生物)が関与しているので専門的知識を多少知る必要があります。

 通常、一般の菌糸ビンは底に穴の開いていない容器を使用しているので空気の流通が悪く、幼虫の呼吸困難を来す時があります。増して、バクテリア等の微生物が高密度で繁殖すれば当然多量の空気が必要になります。
 そこで、私達は簡単に穴を開けることが出来るプラボトルを使用して、底に2mm位の穴を5〜6ヶ所以上設けて空気の流通を確保することにしました。
 
幼虫の大きさにとても影響します。
水の補給
 ビン内部でバクテリア等微生物の繁殖が進むと底に穴が開いていることも関係して水分の不足を来し、幼虫体内でのバクテリア等共生微生物の増殖に影響が出ますので必ず水を補給します。バクテリア等の繁殖(細胞分裂)には多量の水が必要に成るからです。補給する水は硬度の低い天然水が良いでしょう。
 クワガタ飼育の
全く新しい考え方として取り入れて下さい。
オオクワガタの飼育は、TVゲーム同様に飼育ゲームで大きくすることがプレイの主願に成ると私は思います。良い結果を期待出来ます。
バクテリアが菌糸を抑える。
 3齢終期の幼虫を通常の菌糸ビンに入れると羽化する確立がとても高くなります。何故なら、今まで入っていた菌糸ビンは、通常長い間使用していたので菌糸の力が弱まっている筈で、突然入れ替えたことにより新しく強い菌糸の攻撃を幼虫は感じ取り、生命の危険を察するのではないかと思われます。
 従って、菌糸の勢いを抑えるバクテリア等の腐朽菌が含まれていることは3齢からの更なる成長を期待出来ます。結果として、俗に言う”縮み”が非常に少なく成ります。
 3齢終期の幼虫にはバクテリア等が状態を支配している方が適しています。バクテリアビンに入れる時期を調整してバクテリア等の微生物に支配されているものを使用すると幼虫の負担が少なく、かなりの効果が見られます。
 2000年12月中頃、実験の為、菌糸ビンに入れ替えた幼虫の殆どが蛹に成ってしまいました。(2001年2月)
腐敗することが無くなる。
 菌糸の中にバクテリア等の微生物が存在することにより、菌糸の腐朽に制限が掛かり安定します。結果として、状態の良い飼育期間を長く維持出来るように成りますので、ビンの中に入れた幼虫は、1つ所に居座り、その回りを食べながら空洞を大きくする形で育って行きます。超大型が出るに近い状態で幼虫は育ちます。
 そして、時間が経つに連れて、バクテリア等の繁殖が進み摂取出来るタンパク質の密度が高く成るので、大きく成る為の条件が益々整って行きます。

 更に菌糸が死んでもバクテリア等が菌床を支配することに因り、ビン内部の腐敗が起こらないので、幼虫は安心して長期間同じ菌糸ビンの中に滞在が可能で効率良く成長することが出来ます。