菌床について

 初齢から2齢の期間は比較的短いが、その個体が成虫に成る時の最大サイズを決定する重要な時期で、単に菌床に菌糸がまわっただけの状態で無く、菌糸が各種の酵素でおが粉を分解して栄養分を菌糸内部に蓄積した菌床を与えることが重要です。当然、菌糸の蓄積した栄養量を重視する為に、腐朽のスピードが速い樹種を使用すると共に幼虫の大きさに合わせておが粉を微粒にするので益々菌床の寿命が短くなります。更に、キノコの菌糸は異物に対して攻撃的なので、腐朽の進んだ菌糸の力が弱くなった古い菌糸ビンを使用して下さい。また、水分はやや多目の方が3齢幼虫に成った時の頭幅が大きくなるので、含水率も比較的高めに設定します。

 逆に3齢中期以降は体重の増加が止まり、体の外側がほぼ出来上がっているので、交換によるショックで羽化するのを避ける為に、菌糸の寿命も長く安定している粗目で腐朽の遅い長持ちする配合の菌床を使用して、出来るだけ交換回数を少なくする事が必要です。微粒のおが粉は隙間が少ないので、含まれている水分の調整が上手く行かず、蛹室の湿度が高く成り過ぎて羽化に適さないので注意が必要です。当然、水分量も少な目にします。
 樹種だけで無く、おが粉の大きさは水分と空気の保持・調整と菌糸の腐朽速度に大変影響します。

 注意バクテリアを利用した新しい飼育方法が完成した今(2001年4月)では、菌糸だけによる飼育は大型の作出に不利な事が多いので避けるべきです。

菌床の配合

 おが粉の栄養量はクヌギ>ナラ>ブナの順で、菌糸による分解の速さはブナ>クヌギ>ナラという特徴があります。従って、分解の速さから評価すれば、初齢〜2齢までは菌糸の腐朽が速いブナを主にした菌糸ビンを使用して、3齢からは持ちの良いナラを主にした菌糸ビンを使用することになりますが、栄養量を加味して考慮するとクヌギが適しています。
 よって、栄養量と腐朽の速さの両面から見た場合、その配合を簡単に決めることはできませんので、試作した菌床の配合を参考に成ればと思い掲げて見ました。


初齢〜2齢用
 おが配合   ブナ微粒6+クヌギ微粒4
 添加物    フスマ10%
 含水量    50%〜55%
 菌       ヒラタケ菌(シメジ)

3齢〜
 おが配合   ブナ微粒3+クヌギ微粒3+ナラ粗目4
         又は
         クヌギ微粒3+ナラ微粒3+ナラ粗目4
 添加物    フスマ5%
 含水量    50%
 菌       ヒラタケ菌(シメジ)