バクテリアマットの重要性 メニュー項目の表示
成虫の最大サイズは2齢幼虫までの育成の仕方と体内の状態で決まります。

 幼虫でいる期間の内で占める時間が比較的短い初齢から2齢中期は、最終的に3齢幼虫が育ちうる限界、つまりは成虫のサイズの上限を決定する重要な期間です。
 この時期には、栄養価の高い菌糸ビン等の生きた菌糸をいきなり与えるよりも、幼虫に必要な体内バクテリア等を豊富に含んだマットを与えて、より大きく成れる体質を条件として与えた方が遙かに有利です。つまり、若齢幼虫は消化管内で未消化の物を分解する能力が低いので、その能力を早い時期に高める為に消化管内でタンパク源となるセルロース等を分解する体内共生微生物の移譲を目的とした餌を与えることが重要です。

 実際に、数多くの幼虫を卵から2齢まで比較して育ててみましたが、体内バクテリア等の共生微生物を豊富に含んだバクテリアマット(ドルクスクラブオリジナル)の方が菌糸ビンより明らかに平均して大きく成ります。

 当初、幼虫の大きさは遺伝的要素が影響するので、その大きさは個々違うと思っていましたが、そうではなく、2齢中期までの幼虫は生育に適した環境で充分育つことが出来れば、オス、メス関係無くその大きさが殆ど同じで、個体差及びオス、メスの大きさに違いが生じるのは3齢に成ってからと言うことが分かりました。
 つまり、2齢中期の最大サイズはどのクワガタの幼虫も殆ど変わりがないと言うことです。しかし、頭幅は、4.5mm〜6.5mm位の差が有り、これが3齢幼虫が育ちうる限界、つまりは最終的な成虫のサイズに影響します。

 従って、菌糸ビンの様に栄養価が高いだけでは駄目で、抵抗力のない若齢幼虫の成長を阻害している生きた菌糸の影響が無いことも要因で、且つバクテリア等の共生微生物が体内で繁殖していることが影響しているのは確かです。
 幼虫をより大きく出来るか出来ないかは、若齢時に移譲した消化管内バクテリア等の共生微生物を成長する過程でどれだけ有効に利用するかで決まります。

 更に良いことは、バクテリアマットで2齢中期まで育てた幼虫は3齢に成っても体内にバクテリア等の共生微生物を保持出来るので新しいバクテリアビンに入れ替えても、あばれることが少なく居場所の回りをゆっくりと食べ、動き回ることが非常に少なく成ります。
 おそらく、排出した体内バクテリア等の共生微生物が居場所の環境を幼虫にとって適した状態にするからだと思われます。糞の色から察するに、菌糸(白色腐朽菌)の合成した物を消化吸収した後に、バクテリア等(褐色腐朽菌)により効率良く分解されている様子です。このことは、消化管内の状態が整う迄、菌糸ビンを使わずにバクテリア等の共生微生物を多量に含んだ物を食べさせ、2齢後期からの成長に備えることが重要であることを意味しています。

 従って、初齢の時から幼虫の年齢に合った内容の物を食べさせることにより、各個体の遺伝的な要素を越すことは出来ませんが、その幼虫の素質の最大まで大きくすることが出来ます。
 そこで、我々人間にもベビーフードが有るように、若齢幼虫に適したフードの存在が不可欠で、どんなに栄養価が高くても幼虫の年齢に適していない餌は、大きくなるどころか逆に成長を妨げることもあります。初齢から終齢まで菌糸の生きている菌糸ビンを餌として与えることは決して適していると言えません。

 つまり、抵抗力も消化能力も低い若齢幼虫を菌糸ビン等のキノコの菌糸が生きている所へいきなり入れることは、摂取した物を消化吸収する以前に菌糸から体を守る為に、大きくなることを犠牲にしても生命の安全を確保する為に必要以上に体力を使うと思われます。
 なぜなら、カワラタケ菌材飼育では菌糸に巻かれて、幼虫の死ぬことがしばしば有ります。カワラタケ菌は攻撃的なキノコで3齢幼虫でさえ菌糸の強い所にいきなり埋め込んだら危険で必ず菌糸の弱い所から材の中に入れます。幼虫に比較的無害なヒラタケ菌の菌糸ビンでさえ偶に死ぬことが有り、幼虫は大きく成る為に無理をして菌糸の中に入っていると考えられます。

 そこで、まだ菌に対する対抗力も低い若齢幼虫が、体力も付き、消化管内での消化吸収が効率良く行える様に成るまで、”菌糸は死んでいるが栄養価だけが残っていて安心して食べることが出来る餌”と”消化管内のバクテリア等共生微生物の繁殖を促し、体質を今後の発育に適した状態にする餌”の両方の特性を持った理論的に成長を誘導できる餌の開発が必要に成ります。


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