好気性バクテリアが繁殖するとマットが温かくなる理由
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その5

 好気性のバクテリアがマットの中で多数繁殖するとマットが温かくなります。私はバクテリアマット食わせ用を作る時に温度の上がり具合に注意して配合します。当然、無臭であることは言うまでもありません。専門的になりますが、その理由を確認する為に記載しました。

 好気性バクテリアの存在を意識して下さい。

 一般に、生物は炭水化物を酸化分解して、その時発生する熱(エンタルピー)の一部をADP(アデノシン二リン酸)→ATP(アデノシン三リン酸)にリン酸付加を行うことにより、一分子のリン酸の結合エネルギー(高エネルギーリン酸結合)として貯蔵します。
 生物が自己の生命活動を維持していくのに必要なエネルギーは、全てこの逆反応、すなわちATP→ADPを行うことにより、この高エネルギーリン酸結合を解除するエネルギーとして賄(まかな)っています。このことから、ATPは「エネルギーの通貨」とも呼ばれています。
 好気性生物(バクテリアに限らず我々人類も含めて)の呼吸は、この酸化分解を行うために必要な行為であり、最も簡単な系では、一分子のグルコース(ブドウ糖,C6H12O6)を完全に酸化して6CO2+6H2Oを得ると、6分子のADPを6分子のATPに変換し、6個の高エネルギーリン酸結合を作ることができます。
 ところが、この反応、C6H12O6+6O2→6CO2+6H2O+ΔH(この反応のエンタルピー)…@において、ΔHが6個の高エネルギーリン酸結合分のエネルギーよりもずっと大きいために余分なエネルギーが熱として棄てられているのです。

 一方、嫌気性生物は酸素を使って糖を酸化分解することができないので、糖を分解するのに硫黄を使ったりします。(硫黄は周期表で酸素と同じ族であることに注意)

 一般に、嫌気条件下での糖の酸化分解反応のエンタルピーは、@の反応のΔHよりずっと小さいので生じる熱量も小さく、生物のエネルギー獲得手段としては、好気条件よりもずっと非効率なため、嫌気条件下では増殖できる生物の数自体が好気条件下よりも遥かに少ないので、発生する熱量も好気条件下に比べて遥かに小さいのです。